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目貫の見方

目貫の見方

裏行からの考察

目貫をひっくり返せば正体がわかる。

古い目貫は裏行(うらゆき)を見て楽しむ・・・その言葉通りに目貫の裏面は、その目貫の正体が隠された情報の宝庫です。
まずは圧出(へしだし)から・・・画題を造り込んだデザインと彫に沿うように、裏側には圧出と言われる打出しによって凹凸の跡が残ります。古い作は材料をなるべく節約した傾向があり、板厚が薄くその分だけ凸凹をつける技術を楽しむことができます。逆に新しい作は材料の入手が容易になって薄くする必要がなくなり、板厚は厚く、凹凸もなだらかであまり見られなくなります。注意すべきは鋳型から作られた新しい目貫で、厚みがいたって均一で薄くプレスしたかの様な感じのもので、狭い角の部分はタガネが入っていないのか先端が鋭角になっています。つまり、金工がどこまで手を入れたのか、あるいは金工それぞれの圧出の技がここに見てとれる訳です。

根(足)もまた時代を映す象徴かも知れません。根の無い作は古いといわれますが、無いものでもよく見るとその跡が微かに確認できたり、詰めた麦漆(むぎうるし)に隠れていたりと、最初から根の無い作は意外に少ないものです。
次に古いとされる根は芯の中心が空洞になった筒状の根(陰)と棒状の根(陽)が対になった陰陽根ですが、周囲の支金(かいがね)などの素材・色・形・古さ(埃)・鑞付の色などと比較して違和感がある場合は後補の可能性が高くなります。時代が江戸時代まで下がると根は四角形が多くなり長さも縁のラインよりも飛び出すぐらい長くなる傾向になります。
このように、裏側には様々な所作が表れていて、その状態を裏行といいい、古い作の巧みな技を楽しめます。反面、新しい作は裏行よりも表の彫が緻密でデザインも多彩になっていきます。まさに刀の変遷と同じく、実用性から粧飾性重視の造へと変化してゆく様を目貫に見てとれます。

フォルムを立体的に観察する

奇抜なフォルムで平たい姿をした目貫は時代が下がる。

目貫のフォルムは小柄や笄のように限られた枠がないため、愛好家を惹きつけるユニークで奇抜なデザインのものなど様々な形が存在します。いたって自由な表現が可能に思える目貫のフォルムですが、桃山期以前の目貫は、ある共通する形状に沿うように作られているのです。そのフォルムはラグビーボールの形で、実用性を重視した力学的な発想から生まれた形と思われます。つまり、古い目貫はこのフォルムに近い姿をしており、奇抜で自由奔放な姿をした目貫は新しい目貫に多いということです。

新しい目貫は裏行を見ると案の定、板も厚く圧出も弱い様がみてとれ、数物が多くを占めているようです。さらに側面にも新古の違いが見られます。古い作は際端の裾が内側に入り込む感じで括(くく)られており、背も高くこんもりとして負荷に対する力学的構造が見られます。これも材料の節約から導き出された形状であり、薄い板で強い力に耐えられるようにした古人の智恵なのです。新しい作になると、厚板を使用しているためそこまでこだわる必要がなく、柄(つか)の握りに対する流行なのか違和感なのか背の高さも低くなり、裾が外側へ広がった形状に変化していきます。残念なのは、使用する武士の要望なのか、江戸期になって古い目貫の裾を削って背を低くしてしまった例が多く存在することです。よく、表が古く見えているのに裏を見ると、削ったヤスリの跡が残っている作を見かけます(よく確認してください)。需要の産物とはいえ、少し残念な気持になります。

フォルムでもうひとつ・・・抜孔(ぬきあな)です。目貫の所々に画題に合わせて地板を透かした孔です。この抜孔が多いと一般的に古いとされています。代表的なのは古美濃とよばれる作例。秋草を画題にした作が多く、愛好家も多いようです。これも時代の流れは同じで、古い作は薄手の造ですが新しくなるにつれて厚板の作になるので、古美濃と江戸期以降の美濃の区別には注意してください。

新古を色絵と画題から推察

ウットリ・袋着色絵は際端の裾まで覆わない。

目貫の飾色は小柄・笄と同じで、ウットリ、袋着、焼付といった装色法で時代推定の材料にできます(鍍金は時代を通して存在しますのでその限りではありません)。時代が大きく分かれるのは、やはり技術的進化があったと言われる桃山期から江戸最初期あたりでしょうか。各種の色絵の登場はそれまでの手間を効率化し、多彩な表現を可能にしたはずです。言い過ぎかもしれませんが、それまでの古雅な趣がその時点から失われてしまった・・・古い作はそれほど貴重だということにもつながると思います。
そんなウットリ・袋着と江戸期以降による焼付色絵の違いは際端(きばた)にも表れます。うっとり・袋着は金板を溝に挟み込んだり接着(鑞や漆)して固定させるため際端の裾まで覆うことはありません。一概には言えませんが、焼付色絵の場合は金がそのまま裾まで覆われ、中にはぐるっと回り込んで裏面にまで達する例もあります。そういう作は江戸前期以降に作られたと考えた方がよいでしょう。

難しいのは画題で、小柄・笄の傾向とは少し異なる点です。目貫の場合は古い作でも人物が画題に使われたり、動植物、道具、神事など、新旧ほとんど変わりません。違いはそのデフォルメの強弱や彫刻技法・表現であり、フォルム(外形)の取り方が一番異なる点でしょうか(出し目貫等は別に考察する必要があります)。かなり大振りの目貫は圧倒的に新しい作が多く注意が必要です。幕末に多い大目貫は、その大きさ故に判りやすいかもしれません。
あとは素材ですが、桃山期までは赤銅か山銅であり、素銅や四分一、銀などは皆無です。よく見かける素銅(山銅との見分けが難しい)は殆んどが江戸後期の作ですが、江戸初期あたりの作例も少ないですがあるようです。江戸後期からは鉄の目貫も出回ります。もっとも素銅、鉄のどちらも大多数は数物か下手作であり、デザインもオリジナルを少し変えただけの模倣されたものが殆んどです。

揃金具と目貫の取り合わせ

合わせ技に惑わされないように、自分の目と手で確認する。

小柄・笄では触れませんでしたが、二所物(ふたところもの)、三所物(みところもの)といった揃金具(そろいかなぐ)についてご紹介します。

揃金具は基本的に同一金工が同じ画題と作域を、複数の小道具にデザインと彫を展開して作られます。つまり、生(うぶ)のセットものなら良いのですが、市場に出回る揃金具は、類似している各々の作を寄せ集めて揃金具と謳ったものが多いことに驚かされます。これは揃金具の考え方によって、その価値も変るということです。こうした合わせ物の揃金具は今に始まったことでもなく、すでに江戸初期から行われています。なかにはデザインに共通性がなくとも、画題が同じということで、作者もデザインも彫も、もちろん素材の色も異なる無理矢理に揃金具として扱われているケースもあります。これはあくまで価値観の問題であり、評価は皆さんの判断にお任せします。

これと似た問題に、目貫の取り合わせがあります。やはりちょっとやそっとでは判別出来ない異なる片目貫同士を、あたかも表裏揃いの目貫のように装っています。こちらはいけません。納得の上で入手されるのなら良いのですが、相手がどこまで情報を提供してくれるかは信用の問題ですが、その相手本人も気づいていない場合も多いでしょう。そうとはいえ、よく観察すれば色、質感、彫口、裏行、根、支金、見別けるポイントは結構あります。揃金具もそうですが、説明を鵜呑みにしないで、自分の目で見て、自分の手で触れて確認しその評価をしてください。

目貫の時代を極めるポイント

目貫 造込 裏行(圧出・鋳型) 根の有無 力金(支金)の有無 陰陽根 板厚 抜孔
飾色 ウットリ 袋着 鍍金 焼付 象嵌
材料 金無垢 赤銅 山銅 素銅 四分一 鉄 真鍮
形状 裾のくくり フォルム(輪郭) 背の高さ 際端の縁 画題デザイン