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【 必携の一冊をご紹介します 】

刀の鑑賞規範

『刀の鑑賞規範』は、刀剣研究家・中原信夫氏が刀の鑑賞方法の正しい基礎を詳しく解説した前著書『詳説 刀の鑑賞「基本と実践」普及版』を著してから約十数年、満を期して刊行に至った刀剣愛好家必携の教則本です。

前作で解説した刀剣の基本と本質を押さえつつ、より深くそして広範囲に、身に付けるべき項目と要点・視点が書かれています。さらに今回は、あまり触れられなかった偽物や再刃、そして磨上といった所作やプロセス、現象、状態に到るまでを詳細に網羅しています。また、わかりやすく伝えるために写真、押型、そして図解を豊富に掲載して、視覚的に理解できるように構成された内容となっています。

刀を識る上で、これほどの内容を著した解説書は他に類例がなく、まさに「刀の解体新書」ともいえるものです。一般的に出回っている“刀や刀工を讃え褒め上げる”類の刀剣書籍ではありません。解説のコンセプトは、刀身の出来、不出来もさることながら、刀の状態の変化とそのプロセスを探り、現状の品質を見極めることにあります。それも論理的かつ物理的、事実と現実の整合性に基づいた解説であり、見た目やイメージ、思い込み、既成概念、通念といった視点を排除した極めてクールでスマートな内容です。現に中原氏は本書の中で、自分の師の系統である本阿弥光遜の解説さえ一部を否定しています。

本書は、その書かれた内容を自分の知識・ノウハウとして身につけてもらい、目の前にある刀の正体と本質を自分自身で見極めることができるようにと企画・意図された、まさに刀剣鑑定の起点となるバイブルです。そして刀に向き合い愛刀する上で読者の慧眼とクオリティを高める強力な味方になってくるでしょう。巷での根拠のない売り文句や謳い文句に惑わされず流されず、またそれを鵜呑みにすることなく自分で是否の判断を下せるようになるのが、本来あるべき愛刀家の姿であり、そうなるために本書を活用していただければ幸いで。

刀剣本来の本質と評価・基準、真偽までをも解説された内容は、少なくとも既成概念に凝り固まった人達や団体・刀剣商らには決して歓迎されないだろうと著者が語るほど、本書の持つ意義とインパクトは大きいでしょう。本書を読まれて、一層の正しい愛刀の道を拡げてくれる方が増えてくれる事を願う次第です。

Introduction by Nobuo Nakahara

中原信夫氏のご紹介

日本美術刀剣保存協会の元理事であり、機関誌『刀苑』を立ち上げた故・村上孝介氏に入門した中原信夫氏。中原氏が師と仰いだ村上孝介氏は、五ヶ伝に代表される『日本刀の掟と特徴』を著し刀剣界の巨匠と謳われた本阿弥光遜の愛弟子。室町後期・江戸期を通して幕府の刀剣鑑定と研の要職を任された本阿弥家の直系であり、光遜から村上氏へ、そして中原氏へと古より伝わる本歌の教えが今に受け継がれています。いうなれば中原氏は、日本の刀剣鑑定の本歌・本流を継承する鑑定家だといえます。
村上氏亡き後、実直で研究熱心であった師の意志を受け継ぎ、自ら『とうえん』を発行し、40年以上にわたり刀剣学者・研究家・鑑定会講師として取り組んだ知識とノウハウそして極は、もはや右に出るものはいないでしょう。金と権力と名誉を嫌い、利権主義の業界から堅物、偏屈者と叩かれながらも、日蔭の中に真の道を歩んできた頑な中原氏の言葉と行動には、最大の敬意と讃辞が贈られるべきでしょう。
そんな中原氏の人間性も魅力の一つであり、故・福永酔劍氏、故・柴田光男氏、故・鶴飼富祐氏、現代刀匠・大野義光氏など、世に名を馳せた良き理解者・賛同者も数多く、今も熱心な愛好家達から厚く支持され慕われています。

中原信夫

中原信夫(Nobuo Nakahara)
刀剣学者・刀剣鑑定家・刀剣研究会講師・時代刀装具研究家

昭和26年
奈良県奈良市生まれ。
昭和49年
同志社大学文学部卒。村上孝介師に入門。
昭和53年
師の死去によって独立し、昭和54年2月から平成10年12月まで研究会機関誌『とうえん』(隔月刊)を発行。全国の刀剣研究会の講師として活動。
平成13年
『-室町期からの- 大分県の刀』を刊行。
平成17年
『詳説 刀の鑑賞(基本と実践)普及版』を刊行。
平成20年
『-室町期からの- 続 大分県の刀 銘鑑付』を刊行。
平成21年
『本阿弥家の人々』を編集・刊行。
平成22年
『刀の鑑賞』を講談社インターナショナル(現・アメリカ講談社)より英訳版を出版。
令和元年
『刀の鑑賞規範』を刊行
現況
全国の刀剣鑑定会・鑑賞会で講師として活躍する傍ら、刀剣の鑑定、時代小道具の研究など、多彩なメディア・媒体を通した執筆活動と啓蒙活動によって、美術刀剣社会の健全化と発展に積極的に取り組んでいる。