HOME
tsuba symbol

東雲透図(無銘・武州赤尾)

商品番号:TB-057

鐔 江戸後期 保存刀装具 桐箱入

55,000円

竪丸形 鉄磨地 地透 丸耳 両櫃孔

縦:7.96cm 横:7.50cm

切羽台厚さ:約0.52cm 耳際厚さ:約0.50cm 重さ:92.00g

シャープな陰影が際立ち、エッジの効いた陰陽を思わせる本鐔の透。平地には毛彫も一切なし、まるで和風のステンドグラスを見ている印象です。やや黒みの強い鉄地に透を施したデザインは東雲(シノノメ)。夜が明け始めた空、その一時の光景を巧みな構成で表現してみせています。横になびく雲、星を繋げた星座、小鳥を捉えようとするのは隼でしょうか、左上にはもう一羽いるようです。そして小柄櫃孔は月を象っていると思われます。これらを一括りにして東雲の1シーンを演出したデザインと構成力を誉めたいと思います。何しろ江戸時代ですからね、情緒ある光景を幾何学的に表現した感覚に“やるじゃないか”と感嘆した次第。ある意味ユニークで斬新なデザイン感覚です。

本鐔の鑑定書での極は赤尾。越前の赤尾ではなく江戸に出て武州伊藤派と交流を深めたという武州赤尾です。本鐔の武州赤尾や伊藤派はそれなりに繁栄した反面、評価も人気も赤坂の陰に追いやられた感じがしてちょっと可哀想ですね。少し応援したくなったので、ちょびっと好意的に書いちゃいます(敢えて依怙贔屓)。赤尾の作風は簡素な構図や幾何学的なデザインですっきりとした透が特徴とされているようです。本鐔の作域も確かのその範疇ですが、越前という地方から江戸に出てデザイン性に磨きがかかったようで、一歩先をいくような印象に思えます(現代人の目から見た評価なのかもしれませんが・・・)。

鉄味は磨地風の平地も手伝ってか精鍛な風合い、切羽台も端正に整え良い仕事をしていると思います。この風合いは伊藤派の影響を受けている感じもします。透の所作は述べたとおり端正な処理をしていますが、一個所だけ“おやっ”と思わせる痕跡があります。表側から見て右側の少し下、星を繋いでいる斜線です。この斜線、構成するアイテムの中で一番細い透なのですが、その側面に筋が確認できます。最初は鍛肌の断裂(割れ)かと思ったのですがそうではないようです。両側からの彫込んだ際の誤差だと思われ、互い違いになったような段差状になっています。これを失敗とみるかは意見の分かれるところですが、手作業の痕跡ということで大目に見てやっていただければ嬉しく思います・・・なんせ日陰に甘んじる可哀想な武州赤尾ですから(フォローしているのか揶揄しているのか、いい加減な私)。因みに、もしこの段差がなかったとしたら、本鐔に銘が刻られていたかもしれませんね。他には疵らしい痕跡もなく錆状態も含め状態は至って良好です。