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苫船図(無銘)

商品番号:KG-016

笄 江戸中期 桐箱入

40,000円

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 銀色絵

長さ:20.9cm 幅:1.22cm 高さ(紋部最大):0.38cm 重さ:36.70g

苫船(とまぶね)が岸の木に係留されている光景ですが、波風が強いのか繋いでいる綱がピーンと張っています。無理せず波浪をやり過ごして、物事に余裕を持てという暗示を示した趣旨なのか、あるいは故事の留守模様なのか薄学の私にはわかりませんが、光景の醸し出す情緒は何となく感じられます。

造は笄の定寸(約7寸)とされる21センチ弱。肉置の厚みも薄く、肩がやや張った典型的な江戸中期以降の造込です。紋も小縁と左程変わらない高さ、すっきりとした姿ですがやや華奢に感じるのは仕方ありません。そして本作には理解に苦しむ難儀な所作があるのです。裏面をよーく見てみると、額内の裏に相当するあたりに小さなリベット痕が2つ確認できます。表の紋はリベットで留めるような高い紋ではなく地板と一体化した構造です。ということは、この地板を留めたリベットということになるのですが、本作の制作時代は江戸中期。地板は鑞付されるのが普通であり、わざわざ孔を開けてリベットで留めるような事をするでしょうか? 他に考えられるとすれば、元来は別の紋がリベットで留められていて、それが取れたかしたために、現在の地板を鑞付した。リベット痕はその名残というか痕跡だという推測です。しかし本体の薄く華奢な造込との整合性に疑問は残ります。どちらにせよ、納得し難い所作であり、放射線検査で構造を確認するしかありません。ただ、いざ構造が判明しても、根本的な問題解決にはならないかもしれません。

摩訶不思議な痕跡を抱えた本作ですが、作行はかなり上手の彫口をしており、七子地も細かく整然と蒔いています。色絵は銀だけ使用した渋い印象。審査に出せば後藤、もしくは加賀後藤に極められてもおかしくはない作域です。ただし、裏面のリベット痕をどうみるか・・・場合によっては本体の華奢な造込を無視して古金工になる可能性もあります。変わった見どころを抱えた本作、興味のある方はぜひご検討ください。