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黒漆塗紙縒組糸巻柄前

商品番号:TK-003

柄前 江戸後期

30,000円

縁頭/城郭図(無銘) 赤銅磨地 高彫(鑞付据紋) 金色絵 目貫/双蝶図(無銘) 山銅地 容彫 金色絵

長さ:14.7cm 高さ(縁):3.75cm 幅(縁):2.11cm 重さ:81.00g

珍しいいと言うほどのものでもなく、たまに見かけることがあっても、皆さん意外と気にしていないのではないかと思う仕様の柄前です。どこがって? それは柄糸です。本作の柄糸、なんだかテカテカしていませんか。この柄糸、絹や木綿の組糸ではなく紙縒(こより)です。和紙を紙縒にして漆をかけて組糸にしたものなのです。(ご存知の方はこの解説を吹っ飛ばしてください)

何でわざわざ紙縒の組糸なんかを?、と思うなかれ。絹や木綿よりリーズナブルなのが紙縒なのです。江戸の時代、絹はもちろん木綿の組糸は、現代社会の物価や価値観とはまるっきり違ってそれなりに高価な代物。江戸の風俗話に褌のレンタルがあったという話を聞いたことがありませんか? それと同じで絹や木綿の組糸は下級武士がおいそれと巻けるものではなく、本作のように紙縒や皮で代用していたわけです。少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、紙縒の組糸は貧乏侍の味方だったことは確かです。

てなわけで、本作は下級武士が使ったであろう柄前ということになり、おのずと下手作の類? いえいえ、柄糸以外の装着品はそうでもなさそうです。城郭図を描いた縁頭はかなり黒い赤銅地、微妙な陰影の高彫は鑞付の据紋ですが、肉彫かと思えるほど巧妙な据え方をしています。そこへ加賀象嵌風の金色絵を施しており、擦れもあまり見られず良い出来です。目貫は山銅地ながら二匹の蝶が並んだ魅力的な双蝶図。極は京金工へ逃げるしかない作域ですが、彫はそれほど緻密なわけでもなく出来は中級品といった感じで数物ではなさそうです。でも目貫って、柄前に組み込まれていると思った以上に良く見えるもので、評価を一段下げてみることをお勧めします。その視点で見れば、本作の目貫は・・・ううっ(魅惑の蝶ということでコメントは差し控えさせていただきます)。

あとは鮫皮。江戸期の状態をそのまま保っているようですが、所々剥げ落ちた箇所を補修した跡が見られます。この補修跡、明治期以降に接着剤かなんかでくっつけただけの安易な繕いでちょっと残念。親粒は当然の如く入子師(いれこし)による“なんちゃって親粒”。江戸期の柄前で生の親粒がついた鮫皮なんて極上の上手作以外滅多に見られない代物。紙縒の組糸が巻かれた本作には高嶺の花、ご了承ください。

装着した金具類は江戸期のものであっても、柄前自体は明治期以降に作られた柄前や拵が殆んどの中、江戸期そのままの作は意外に少ないのが現状です。多少の難があっても、本作のような当時の姿を伝える現存品はなるべく残したいものですね。魅惑の金具に目が眩み、安易にバラバラ事件は起こさないように願いたいものです。